東京高等裁判所 平成9年(行コ)70号 判決
控訴人には本件各更正(ただし、前記違法と判断した部分を除く。)によって新たに納付すべき所得税があり、国税通則法六五条により過少申告加算税が課されることになるので、同条四項の正当の理由があるかどうかを検討する。
甲九ないし一一号証(以下「本件解説書」という。)は、個人から法人に対する無利息貸付については課税されないとの見解が記載されている解説書であるが、いずれも編者及び推薦者又は監修者として東京国税局勤務者が官職名を付して表示されており、財団法人大蔵財務協会が発行したものである(各巻末に、財団法人大蔵財務協会は、大蔵省の唯一の総合外郭団体であり、財務、税務行政の改良、発達及びこれに関する知識の普及という使命に基づいて出版活動を続けている旨の記載がある。)。本件解説書は、正確にいえば私的な著作物であり、個人から法人に対する無利息貸付について本件規定の適用が一切ないことを保証する趣旨までは記載されていないが、各巻頭の「推薦のことば」、「監修のことば」等において、東京国税局税務相談室その他の税務当局に寄せられた相談事例及び職務の執行の際に生じた疑義について回答と解説を示す形式がとられていることが記載されており、税務当局の業務ないし編者等の税務当局勤務者の職務との密接な関連性を窺わせるものである。したがって、税務関係者がその編者等や発行者から判断して、その記載内容が税務当局の見解を反映したものと認識し、すなわち、税務当局が個人から法人に対する無利息貸付については課税しないとの見解であると解することは無理からぬところである。そして、甲二一、二二号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人の税務関係のスタッフも本件消費貸借をするに際し税務当局が個人から法人に対する無利息貸付については課税しないとの見解であると解していたことが認められ、これを単なる法解釈についての不知、誤解ということはできない。以上を総合すると、控訴人には本件各更正(ただし、前記違法と判断した部分を除く。)によって新たに納付すべき所得税があるが、過少申告加算税を課することが酷と思料される事情があり、国税通則法六五条四項の正当の理由があるというべきである。なお、乙第五号証の一(会計ジャーナル昭和五〇年九月号)には、株主から同族会社に対する無利息貸付について本件規定が適用されるとの見解が記載されているが、右雑誌の存在により、以上の判断が左右されることはない。また、本件各更正が信義則の適用によって違法ということができないことは前示のとおりであるが、このことと国税通則法六五条四項の正当の理由に関する判断とは別のものである。
(荒井史男 大島崇志 豊田建夫)